-心に傷がある全ての人に捧ぐ-


深愛なるミカンへ

あれから7度目の夏が巡ってきました。憶えてくれていますか?



~序章~

昨夜降った雨に濡れたアスファルトが朝日を受けて、辺りに煌めきをバラ撒いたそんな1日の始まりだった。

女はキッチンで鼻歌を唄いながら朝食の支度に勤しんでいる。

何処にでも在る朝の風景。

(結婚生活も7年過ぎれば、それなりに余裕もでき、立派な主婦になったと言えるだろう。)

二階から男が降りてきた。

「おはよう」

「あっ、おはよう。もぅ出来るから」

そう言って女は皿に盛付けている。

今朝のメニューは

フレンチトースト
ベーコンエッグ
ゴボウサラダ
ブラックコーヒー

男の前にそれらを並べながら女はまだ鼻歌を唄っている。

「今日は朝から機嫌いいね。それ誰の曲?」

「分かんないのよー。TVのCMで流れてるの聴いて覚えたの。いい曲なのよ」

どうやらお気に入りの曲らしい。

男は「ふ~ん」と言ってTVを着け、朝食を食べ始めた。

朝食を食べ終えた男は手早く身支度を整え、サッサと会社に出掛けて行った。