変わらないコーヒーの味

「彼氏さんは、こちらでお待ち下さい。」


救急の入口で待ち構えていた看護士は、俺にそう告げるといそいそと手術室の中に入って
いった。

手術中のランプが点る。


「くっ…。」


俺が、あの時あの場に居なければ美紀は今頃映画を楽しんでいたのだろうか。

ましてや、俺が早紀に現を抜かしていなかったら…。


美紀を愛していないわけでは無い。

むしろ、一番大切に思っている。

浮気…してるつもりは無かったなんて言っても、誰も信用しないであろう。

浮気と呼ばれる行為をしたのは、俺なのだ。


美紀が買った雑誌をめくる間もなく、美紀が何をしたかったのか手に取るようにわかる。


「楽しみにしてたんだな…。」


今朝、美紀に言った自分の言葉を思い出す。

軽々しく言ったつもりは無い。

けれど、美紀に期待させ、そこからどん底に落としたのはこの俺。


…美紀は、俺を許すだろうか。

いや、許さなくてもいい。

許さなくて良いから、どうか命だけは…美紀、生きてくれ。