君と出会って

「…違うよ、真由が原因とか、そんな事じゃない」

真由は黙って頬を伝う涙を拭ってくれる。

「ここでは去年までの俺を知っている人がたくさんいる。
何故、今年は走らないの、とか…俺も走れるなら走りたかった」

真由にこんな事を言ったのは初めてだった。

真由は真剣な眼差しで俺を見つめている。

「でも、賢司さんから受けたバトンを投げ捨てる事は出来ない」

自分一人で走っている訳じゃないから。

そこには支えてくれる人がたくさんいて。

俺もまた、賢司さんや至、そういった人達がいて走る事が出来た。

賢司さんがいなくなって、俺が今まで支えてもらった事を次の世代へ。

次の世代を支えてあげなければいけない。



…全ては拓海がこの世を去って。

狂ってしまった事かもしれない。

拓海がいれば、もっと早い段階で表舞台から降りただろう。

けれど。

それでは俺はいいライダーを育てられないかもしれない。

第一線でライバル達と戦う事を覚えて。

そして勝った。

この経験がなければ。

祥太郎や光など、天性の才能を持ったライダーに慕われる事も、またその上に立つ事も出来なかったはずだ。

だから、今は自分が取った行動が正しかったのだと。

そう思いたい。

会う人、会う人にどれだけもったいない、と言われても。

自分も走りたい、なんて思っても。

これで正しかったと…