「更に残念なことに、その歪みはこの図書室にあるんだ」
本当に残念なことだ。
何で俺らが一番近くにいるんだよ。俺ら二人仲良く犠牲者第1号・2号ってか。
コンビ芸人かっての。

「幸いその歪みをこの空間に閉じ込めておいたから元の世界に影響はないけど、僕達が元の世界に戻るためにこの空間を消したら、歪みまで一緒に戻ってきちゃうんだ。要するに僕達がこの歪みをどうにかしないと、僕達二人だけ・・・まあ、残念な事になってしまうね」

残念どころじゃないだろ。

こんな状況になっても冷静に心の中で突っ込みを入れることが出来る分、自分もなかなか肝が据わってるなあとシオンは自分自身に感心していた。

「ん、ちょっと待て。僕達って、俺も何かしなくちゃいけないのか?」
「そうしてくれると有難いんだけど・・・別に強制はしないよ。でもその代わり生存率に少しばかり差ができるけど」
要するに手伝え、という事である。

「俺は別に魔法も超能力も使えないし、お前みたいに空間構築能力なんてのもないぞ」
「いやいや、確かにそれらの能力は持ってないかもしれないけど、シオンは普通の人間ではないはずだよ・・・この空間にちゃんといる時点で。普通の人間は入り込めないか、入り込んだとしても数分で存在を抹消されてしまうから」

さらりともしかしたら俺が消えてかも知れないという事をいいやがった。
やはりこいつはリクだ、とシオンは思った。

どうやら“俺はまともで普通な人間”説が覆されてしまったようだ。
俺はこういうのを信じていなかったのに・・・・。

自分自身が非現実的存在である事を知り、シオンは少しショックを受けた。

「異空間に侵入できるって事は、この歪みの中にも入れるって事だからさ、協力してよ」
「協力って・・・どんな風に」
何となく答えは予想は出来ていた。

「歪みの中に進入して、異世界に行くんだ。その世界で起きている問題を解決したり・・・」
ここまでは予想通りだった。



「場合によってはその世界を抹消、つまり・・・滅ぼしたり、する」


これは予想外だった。