「シオン、今・・・もしかして僕との間に深ーい溝が出来たりしてる?」
当然だろ、お前が人間に思えなくなってきた。
というのが本音だが、リクは普段明るいが何気ない一言で深く傷ついたりするのでシオンは

「少しは、な。でもやっぱり普段の方が素のお前みたいで安心したよ」
とだけ言っておいた。

「・・・・・じゃあ、説明続けるね」
何だ今の間は。
やっぱり見透かされてたか、いやそんな事はどうでもいい。とにかく話を聞こう、まずはそれからだ。
シオンは説明に耳を傾けた。


「この空間自体は簡単に消す事が出来るんだけど・・・問題なのはもう一つ、別の空間が“自然発生”してるって事なんだよね」
「自然発生って・・・どういう風に?」

「例えるなら・・・作家や画家、音楽家なんかは芸術的センスが優れている・・・つまり想像力がとても豊かって事でもあるよね」
まあ、それはそうだな。
やっと自分にも理解できる内容の話になったな。とシオンは安心した。

「これらの人間は普通の人間より想像力が非常に強いんだ。自分でも抑えきれないほど、それは強大な力なんだ。これがどういうことか分かる?」

分かんねえよ。
またシオンは不安になった。

「つまりね、そういった想像力の強すぎる人間が知らないうちに一つの世界を生み出しているんだよ。それが脳内に収まりきらなくなって溢れ出したりして外に出てきたりすることで、空間に歪みを生む。それを“自然発生”と僕らは呼んでいるんだ」
僕ではなく“僕ら”というのが気になったが、シオンはとりあえず今は聞かない事にした。

「始めは小さな歪みでしかないけど、徐々に大きくなってきてこの世界の物理法則や歴史なんかを滅茶苦茶にしてしまうことだってあるんだ。それによって飲み込まれてしまった世界だってあったんだよ」
あったんだよ、って簡単に言うがそれって“世界崩壊”というやつではないのか?

「で、その世界をどうにかしちまうような、おっそろしい歪みがどっかにあるって言うのか?」
今日のリクは俺の望む回答を一度もしてくれない。
今度ばかりは「あはは、冗談だよ冗談」とでも言って欲しかった。
そうしたらぶん殴って「ふざけるな!」となるのだが。



「残念なことに」


・・・神様にでも祈りを捧げたい気分だ。