「しかし、この罪人はぁっ!!」
執政官は自分のすぐ隣で蹲っている少年の胸倉を掴み、ぐいと持ち上げた
その少年が、エリオだった

「その神である“音楽”を否定し、あまつさえ・・・貴族の少女に“歌”を歌うことを強要したのであるっ!」
執政官の語気が強まる。怒り以外の、憎しみのような感情が感じられた

「歌は古来よりこの国では、魔女の呪文の一つとされてきた。歌を歌うことはすなわち魔術を行使するということ。かつて魔女がわが国にどれほどの害をもたらしたかは、諸君らの脳裏にも未だ鮮明に焼きついているだろう」

「魔女、か・・・」
「まあ、本当に魔法を使ったかどうかは知らないけどね」
シオンとリクが他の人たちに聞こえないような小さな声で話す

「・・・つまり、この罪人はあの“ディーバの惨劇”を再び引き起こし、国家転覆を企てようとした、許されざる、罪深き悪なのである!!」

その後は同じようなセリフが続いた
大抵は、いかにエリオのやろうとしたことが悪いことで、それを裁く自分たちは正義の使者であるとか、そういうどうでもよさそうな、自分たちに都合のよさそうな言葉を並べているだけだった