「あいつのことは知らないのか」
リドルは頷く
「きっと、違う派閥にいるのかも」
「派閥・・・?」
リクは説明した
「能力者を中心に構成された、組織のことだよ。政党みたいなものかな、たぶん」
「お前もどっかの派閥に所属してるのか」
「うん、これでも位が高いよ」
そこはシオンにはどうでもよかった
「いつかシオンのことも紹介するよ、それに・・・」
「それに?」
「うーん、いや・・・何でもないよ」
「そうか」
「さて、明日の午後に何があるのかは知らないが」
「せっかく来たんだし、様子を見なくちゃ・・・ね」
二人は町に向かって歩き出した
とても心地よい風が吹き、若草色の海が波打つ
その風に乗って、どこからともなく音が聞こえてきた
それはとても美しく、でもどこか悲しい音だった
ピアノの音色だった。知らない曲だったが、どこかで聴いた事がある気がする
「あそこからかな?」
リクが町の方を指差した
「・・・・・・・・・」
「シオン、どかしたの?」
シオンは何か考え事をしていた
「シオンさーん、起きてますか?」
「ああ、起きてるよ」
二人は町に向かって歩き続けた

