世界から


「私の家族も皆死んだ・・・目の前で、面白いように次々と殺されていったよ。幼かった私は物陰に隠れていた・・・体がまだ小さかったから見つからずに済んだのだろうな」

黒マントはサーベルに付いた血を布で拭きながら語りだす

「その争いには特に理由は無かった。宗教にも民族にも違いは無い、違ったのはものの考え方だった。議会の決定に賛成するか、そうでないか・・・たったそれだけのことだった」

黒マントは服に付いた返り血も丁寧に拭き取る

「議会の決定自体は皆どうでも良かったのだ。ただ争いたかっただけ、動物としての本能に従いたかった・・・たったそれだけだったんだ」

「本能、ね・・・」
リドルが呟いた

「本来動物、特にオスには“自分の方が相手より優れている”ことを証明したいという競争本能がある。人間はそれが他の動物より強く、知能もそこそこにあったからここまで発展してこれたのだ。しかし平和意識が少しずつ強まってきて、争いごとは止めようなどと世迷言を言い出す連中が出てきた」

「平和は尊いぞ、そういう言い方は止すんだな」
「・・・確かに平和は素晴らしい、素晴らしいさ。だがねえ、争い競い合うことを止めたらそれは本能を無理やり押し殺すことになるんだ。我慢をしすぎると、心も体もいつかは壊れてしまう・・・それではあまりに愚かだと思わんかね?」

黒マントの言うことには一部だが同意できる部分があった。
だが、シオンにはどうしても許せなかった。

「しかし憎しみ、殺しあうのは止めろと国は言う。・・・そして私は提案した」



国内の人間は“殺してはいけない人”
国外の人間は“殺してもいい人”


「そう、区別しようではないか・・・と」