ロゼは遠くを見るようにして
「人とはとても残酷な生き物だ。他の動物たちと違い、快楽のためだけに他者の生命を奪おうとするのだからな。だが、それは人の顔の一面に過ぎない。」
そう言って、何故か虚しそうな顔をした
「彼らはただ、後押しされただけなのだろうな」
占領された町の中央にある、大きめの屋敷の一室に、二人の男が居た。
「そうかそうか、言う気は無いのか・・・結構」
黒マントの男は薄笑いを浮かべて、目の前に蹲る軍服の男にそう言った。
「そうまでしてなーんで上官を守るかねえ・・・ま、いいか」
黒マントはそう言って、腰に差したサーベルを抜いた
「では、死んでくれ」
床が鮮やかな赤に染まった。
黒マントは「くっくっ」と笑いを堪えながら天井を仰いだ
「いやあ・・・平和って、素晴らしい」
男はそう言って、サーベルを持っていないほうの手で顔を掴むようにして覆った
「全くだな」
あるはずの無い返事に、黒マントが笑いを止めて反応した
返事をしたのはロゼだった。後ろにシオンとリドルが居た。
「おやおや、弔い合戦ですかね」
「そんなところだ、悪いが死んでくれ」
ロゼは自分の部下の無残な死に様にも動揺はしなかった。
していないように、見えた
「それはできませんなあ・・・私、死ぬのは嫌ですから」
「・・・・・・!!」
ふざけた男だ・・・こんな奴のせいでたくさんの人が・・・
シオンは黒マントの言葉に怒りを覚えた
「あんた・・・自分は人を殺しておいてよくもそんなっ・・・」
「仕方の無いことなんだよ、これは仕方の無いことなんだよ少年」
黒マントは話し続けた
「私の国はね、外との争いよりも、国内での争いの方が酷かったんだ。悲しいだろう、同じ国の人間なのに憎しみ・・・殺しあうなんて」
シオンは今すぐにでも黒マントに殴りかかりたい気分だったが、ロゼが黙って聞いているのを見て、自分も我慢した

