世界から


3人は敵の拠点を目指して歩きながら話を続けていた。
「奴らは隣国テューダの人間だ。今まで中立国であった奴らだが、突然宣戦布告も無しにいきなり攻め込んできた。圧倒的な武力によってわが国の軍は壊滅状態になった。・・・平和の国とまで呼ばれるほどに争いごとを好まぬ国だったのだが・・・」

「シオン」
シオンは頷いた。きっとそれがこの世界をおかしくしてしまっているんだと。
「本来ならその人の中で完結させるべき思想が、あまりに強すぎたために溢れ出したんだ」
リクはシオンにだけ聞こえるように言った。

「奴らは軍隊だけではなく、自分達の国の民まで戦争に駆り出している。だがそういった連中は守りの薄い場所を狙って攻めてくる。そして楽しむように人を殺していく」
思想書の通りだった
彼らは互いの争いは好まないが、第三者を一方的に嬲ることはどうやら嫌いではないようだ

「そして憶測だが、この戦いの首謀者がその町にいると私は考えている。お偉いさんは安全なところが大好きだからな。国民達と一緒に虐殺を楽しんでいるのだろうよ」
「ということは守りも堅いんじゃない?」

「いや、奴らの大将もそれなりに馬鹿では無いようだ。あからさまに守りを固めたら居場所を教えるようなものだからな。他の町と大して変わらない程度だったよ。だがな、僅かだが違いがある。この町は最前線からもっとも遠い位置にある。そしてあの町は高地にあるため敵の進入にはいち早く気付ける。・・・要するに、一番安全な所なのだよ」

「それで、どうやってたった三人でその町を攻め落とすのさ」
「たった3人だからこそ、出来る作戦だ。よく聞いておけ」


「お、帰ってきた・・・ん?」
「ど、どうしたんだお前・・・血だらけじゃないか!!」
「・・・・・・」
「おい、何とか言ってくれ、・・・おい」
「・・・他の連中は、まさか」
「・・・畜生」
「・・・何か握っている、紙切れ・・・何か書いてある・・・これは・・・!」

町の入り口を警備していた二人の男がなにやら相談したあと、片方の男が町の中に走っていった。