世界から


「あなたはそうまでして、何故・・・圧倒的な力の差があるというのに向かって行こうとするんです。国のためだ、なんて所詮建前でしかない筈だ・・・」
ロゼは微笑した。

「ふふふ、貴様・・・戦ったこと、無いだろう?」
シオンは黙って頷いた。
「無いです。だから戦っているものの気持ちが分かる筈が無いとでも言いたいんですか?」

「そうではない、それを言うならば我々にも戦っていない者達の気持ちなど分かる筈があるまい。私が言いたいのはな小僧、貴様には“自分だけ生き残ってしまう情けなさ”が分かるか?」
シオンは黙っていた。何も言えなかった。

「もっと具体的に言ってやろう、貴様には“部下が己の命を対価に生かした指揮官の無念”というものが理解できるのか?」
シオンは何も言えなかった。


「理解できないだろう。理解できるのはな、自分の部下に“あなただけは生きてくれ”と言われて、その部下が目の前で敵に吹き飛ばされるのをただ見てることしか出来なかった哀れな指揮官殿だけなんだよ小僧」

「では貴方はその部下が命を懸けて逃がしてくれたというのに、部下の敵討ちに行って死のうというのですか?」
「馬鹿なことを言うな小僧、誰がそんなことをすると言った」

「部下の気持ちを無駄にするんですか」
ロゼは含みのある笑顔でシオンを見つめた。
「貴様、面白いことを言うな。そんなことをする訳が無いだろう」
「だったら・・・」

「私が二度も敗北すると思っているようだな、全く嘗められたものだ」
「え・・・」
「負けるつもりなら貴様らに協力など持ちかけておらん。見せてやろう、我が策謀を」
ロゼはすぐ近くで倒れていた男の襟首を掴んで持ち上げた。


「貴様らが奴らと戦う理由は聞くつもりも無い。私も貴様らに私のことを話すつもりもない。今はただ作戦の遂行に全力を注げ」
「りょーかい」
「・・・分かった」
リクとシオンがそれぞれ返事をする。


「奴らはこの先にある町を占領し、拠点としている。既に住民はほぼ全員殺されている、今は残党狩りを楽しんでいるようだな。貴様らもここに来るまでに出会っただろう?」
二人は頷いた。