世界から



ロゼの水晶のような美しい義眼が二人の目を奪った。それは全てを見透かし、全てを支配する・・・恐怖すら感じる輝きを放っていた。

「・・・怖いか?」
ロゼは二人を見ていった。

「分からない・・・恐れているのかもしれない。でも、そうでないかも知れない」
シオンは答えた。

「よろしい、私の能力はこの眼を媒体とした無生物に対する“命令”だ。この眼で見ながら命令を下せば、それは言われたとおりにその命を実行する。」
「魔眼・・・」
リクがそう言った

「そう、呪われた眼だ。だが私はこの眼で今まで生き抜いてきた。誇りも持っている」
リクは黙ってロゼを見ていた。

「これでもこの国の軍隊の指揮をしていた身だ。策を練るのも白兵戦も一通りこなせる。・・・さて、それではお前の番だ」
ロゼはシオンを見た。

「俺は・・・別にそんな能力なんて・・・」
「そうか、では武術は」
言いづらそうなシオンを見て、リクが代わりに答える
「大の男が数人がかりでも勝てないくらいです」

「そうか、ならば充分だ」
ロゼはシオンを過小評価も過大評価もしない。

「言っておくが私には世辞や見栄、そういったものは必要ない。そんなものがあったところで己の無力さは変えられないからな」
彼女なりにシオンたちを認めた、ということだった。

「こっちもまた質問しても、いいですか?」
ロゼは沈黙で返した。それをシオンは承諾したとみて話す。

「あなたは何故、彼ら・・・侵略者たちと戦おうとするんですか?たった一人で」
ロゼは少し表情を曇らせて、こう答えた。
「軍人が最期まで国のために戦うのは当然のことだと思うのだが」

「・・・リク、能力を使える人間って言うのは精神的に強い・・・だったよな」
「まあ、うん」
シオンが何を考えているのかリクには分からなかった。
「そんな人間が玉砕主義なんて、どうにもおかしい気がするんですが」
ロゼは顔をしかめて

「そういう言い回しは嫌いだ」
シオンを睨んだ