世界から

声からすると女性だった。女性にしては少し低めで力強い声だった。その声からは押し隠した憎悪と殺意が感じられた。

「仲間・・・って、ええーーー・・・・・・」
何だか物語ではよくあるパターンだった
共通の敵を持っている二つの勢力若しくは人間が、勘違いか敵の策によって無益な争いを・・・

「突き進め」
女性は持っていたナイフに向かってそう囁いたあと、こちらに軽く投げてきた
するとナイフは投げられた力と速さに比例しない、もの凄い勢いでシオンたちの方に飛んできた。

「お、おいっ!!」
これってやばくないか?そう言おうとした瞬間だった。
リクは持っていた本を開き、本の外側を自分の方に向けて前に突き出す。
ちょうど相手に本の内容を見せるような感じだった。

本が光り出し、ナイフは本に吸い込まれるようにして飛び込んでいった
光が消えると、本のページには本物そっくりのナイフの絵が描かれていた

「貴様」
女性が何か言おうとした
「こいつらの拠点が何所にあるか、教えてくれませんかー?」
リクが大声で言った。
すると女性は少し驚いたようにしてしばらく沈黙した。

「おい、リク」
何でそんなこと・・・
女性には聞こえないようにシオンは小さな声でリクに聞いた

「“僕たちは仲間じゃなーい”なんて物語じゃ大抵信じてもらえないよ。疑うのは簡単だけれど、信じるのはとても難しい、うん」
だったらこいつの仲間が言うはずもない質問をあの女性にしてやればいい
リクも小さな声で答えた

「・・・・・・」
女性はシオンとリクの眼をじっと見つめた
女性は右目が義眼だった。水晶のようなとても澄んでいて綺麗な義眼だった。
女性は黙ったまま左手の眼帯を右目に巻く

「・・・・・・そんなことを聞いてどうする、貴様ら迷子か。この国のものでも、私の敵でも・・・どうやら、ないようだが」
「そうですね、予定では彼らの拠点を潰すか彼らの大将の首でもスパッと刎ねる予定です」

またなんでそう明るくさらっと大胆な発言が出来るというのだろうか、こいつは・・・