「さて、さっきからずっと後をつけてきてるわけだが、止まったぞ。あの男」
「まだこの森を抜けた訳じゃないけど・・・何かあったのかな?」
「・・・ん、もう一人誰か居るな」
「嘘、よく見えるね」
シオンは身体能力が全てにおいて平均以上に高かった。特に反射神経や動体視力、状況判断能力など瞬間的に発揮する能力は異常で少し人間離れしていた。
「ん・・・何やら揉めてるな」
「あ、見えた。確かにもう一人」
もう一人の人間がすこしこちら側に近づいたのでリクにも見えるようになった。男とその人間は向かい合って何かを話している。
「「・・・!!」」
二人は驚いた。
男がこちらに走ってきた。恐怖に引きつった表情だった。
「な、何やらよくない空気だね」
「そうだな、どうする?」
言っている間に男がこちらに気付いて走り寄って来た。
「あ、あんた、ら・・・たす、助けてくれ、殺される!!」
「殺されるって、あいつは一体誰なんだ?」
「こ・・・この国の生き残り・・・しょうぐっ」
言いかけて男は声をあげて倒れ、動かなくなった。
男の背中にはナイフが数本、深々と刺さっていた。恐らく刺したのはまだ正体の掴めないもう一人の方だろうが、距離が遠すぎる。たとえ投げても届く距離では無かった。それに
「まずこれ、投げナイフじゃないよね。フツーのナイフだよね?」
「まさかあいつも何か能力が使えるとか?」
シオンは適当に言ったのだが、リクは目を丸くして「あっ」と一言
「どんな世界にも能力を扱える人はいるんだ。忘れてた」
「・・・おい、こっちに来るぞ。しかも」
謎の人物はかなりこちらに対する敵意に満ちた顔をしていた。右手にはナイフを持っていた。左手には何故か黒い眼帯が握られていた。
「貴様らも仲間か、ならば神の下に行って私の部下たちに詫びて来い」

