「じゃあ、そろそろ引き返そうか」
「ん、お前やっぱり信用してなかったのか」
「信じる心なんて、遠い昔にどっかに置いてきちまったよ・・・」
「へいへい」

自分では決め台詞か何かとでも思っているのだろうか。
とりあえず適当な返事をしておいて、シオンたちは来た道を引き返した。

しばらく歩いていくと、先ほどの男が南に向かって歩いているのが見えた。
リクがシオンを見て、「ほーらね、やっぱり」とでも言いたそうに、にやりと笑った。

「あんまり近づき過ぎないように後を追うか」
「了解です、警部」
何故こいつはこんなにテンションが高いんだろう。
さっきからずっと笑顔のリクを見て、シオンは歩き続ける。


「嬉しいなあ」
「何がだ」


「一人じゃないっていうのが、さ」


そうか、今まで俺やソラの知らないところでこいつは一人で・・・。
肉体的にはとても同い年には見えないが、実際にはこいつは・・・年を取っていないとはいえ、俺達の倍以上生きてきたんだろうな。


リクのその言葉が、とても悲しく、とても寂しそうに聞こえた。
「悪かったな、今まで」
シオンはリクに謝った。複数の意味を込めて。

リクが驚いた顔をして、「ちょ・・・何だよ、いきなり」と気味悪がっていた。




(余談だが、リクとソラは二卵性双生児というやつである。要するに双子なのだ。)