「き、北だ!!こっから北の方角にある港町、そこからやってきた!!!」

意外にあっさり喋るので二人は少々不審に思ったが、この男は別に兵士というわけでは無さそうだった。
あまりに弱すぎた。もし兵士や騎士か何かだったら、死んでも敵にそういう情報は漏らさないだろう。


「ふーん、まあいいか。じゃあ、放すよ」
放した直後、男は床に崩れた。
すぐ近くには先ほどリクの本から飛び出したナイフが1本落ちていた。

男はリクが本を出していてこちらから目を放していて、シオンは自分から少し離れた位置にいるのを確認したあと、ナイフに手を伸ばす。


「よくも・・・やりやがっ」



言いかけているうちに、目の前のナイフが光りだし、一瞬にしてリクの本に吸い込まれていくのを見て、男は唖然とした
シオンも驚いた顔をしていた。

リクが男に向かってにやりと笑って、
「残念でした、また次回」
北に向かって歩き出した。
シオンもついて行った。


残された男は一人呆然としたまま、
「ま・・・魔術師か、あいつ」
よろよろと立ち上がって、歩き出した。



「すごいな、何だあれ、魔法か何かか?」
シオンが聞くとリクは別に嬉しくも無さそうに、
「まあ、そう考えてもらって構わないよ」
答えた。


「僕はね、自分で書いた絵とかを実体化できる能力を持っているんだ。心を込めて、尚且つ上手に書くほどそれはより強く実体化できるんだ」
そういえばこいつ、芸術系の教科のテストは全部毎回満点だったな。実技のみだが。

「別に絵に描いてなくても実体化は出来るんだけど、それだと時間がかかるし集中しなきゃいけないからあんまり実践向きじゃないんだ。」
「創造と想像の力ってやつか」
「そうそれ」

話によると本が無くても呪文とか唱えたり、音楽とか奏でたり、踊ったりすることで能力を使うこともできるらしい。
要するに、自分が一番集中できて、想像力を働かせられればそれでいいらしい。

「例外もいろいろあるけどね」