「いくらなんでも・・・」
「酷すぎると・・・思う?」
シオンは頷いた。


「シオンは“破壊による平和”って読んだこと・・・まあ、ないよね」


最後に少し馬鹿にされた気がしたが、今のリクはシオンから見てもとても恐ろしく見え
て反論できなかった。

自分より小さくて、力も弱く、幼馴染という短くない付き合いではあったが、今のリクは確実にシオンが普段見てきたリクとは違っていた。


「あの本はね、自分たちより弱い立場の人間を虐殺することによって、自分たちの間では争いごとを無くそう、っていう考えを書いた本なんだよ。前に読んだことがある」

シオンは酷く嫌悪感を覚えた。要するにいじめか、現実社会と似ていて反吐が出る。

「だいぶ昔の思想家が書いた本でね、その人のいる国は国内での争いが絶えなかったんだって。争いの原因は大抵が反乱、または貧困による国民同士の争いだった。そこでこの思想書には、平たく言えば国民の鬱憤を・・・他の国を侵略して、そこの国の人間を国民たち自らが虐殺することで晴らそうって書いてあるんだ」

シオンは明らかに機嫌が悪そうに、
「狂ってるな、全く」

「それがこの世界で実現されているとしたら・・・」
「ここはその侵略された国で、俺たちは“どっちか”と間違えられて・・・」

茂みから小さな音が聞こえた。


「そう、そして」


シオンが後ろから飛び掛ってきた虐殺者の生き残りを殴りつけ、そして武器を叩き落とし、そのあとリクが男を投げ飛ばし、そのまま男の腕を後ろに回して間接を極めた。

「こいつらが、虐殺者のうちの数人って訳か」
リクは首肯した。

笑顔で、リクが男の肘を折れる寸前まで極めたまま
「いててててて!!!!はっ・・・放してくれ!!!」
「あんたたちは何所から来たんだ?」
シオンが問い詰める。
穏やかに振舞っているが、明らかに怒っているのがリクには分かった。


「早く言わないと僕じゃなくてシオンに殴り殺されちゃうよ、おじさん」
リクが男に冗談ではないことを分からせるため、指も一本極めた。
「あっ、あががああがががが!!!!ゆっ、指っ、折れっ!!!!」


「何所から、来たんだ」
シオンが再度質問をした。


「答えろ」