「ありがとうございましたぁっ!!」
何でかいきなりリクが叫びだした。
それほど嬉しかったのか。
「まさかこんなに早く見つかるなんて・・・ああ、神様ありがとう」
やっぱりこいつ変な電波浴びてるんじゃないのか、うーん分からん。
とりあえずいつものリクと大して変わらないので放っておいた。
「さて、ここからが本番。歪みの中に侵入してこの本の創り出した異世界に飛んで、歪みの発生原因を取り除こう!」
「侵入って、どうやって?」
「簡単だよ、目を閉じて片手を歪みのある所に置く。あとは自分が異世界に飛んでいくイメージをするだけ」
お前主観で簡単って言われてもな
「イメージって、どんな風に?」
「大丈夫だって、この空間に入れた時点でそんなこと簡単に出来るはずだから、さ」
まあ、こんな風にやるんだよ。
そう言ってリクは目を閉じて、左手で本を持ったまま、右手を歪みの中に突き出した。すると右手が歪みの中にどんどん吸い込まれていき、瞬きをした次の瞬間にはリクの姿が無かった。
「先に行って俺が出来なかったらどうするつもりだよ・・・ったく」
シオンも同じようにやった。
案外簡単に出来たが、吸い込まれていく感じが今まで体験したことの無い感触で、正直気持ち悪かった。
時空間というべきか、そこを移動している最中は何も見えず、何も聞こえず、ただ浮遊感だけがそこにあった。
漫画とかアニメとかなんかで時間を移動しているときはもっと青々とした空間の中を移動していたものだったが。
「助けて」
誰かの声が聞こえた。
リクの声ではなかったし、それに一つでもなかった。老若男女様々な悲鳴にも似た声がその言葉を叫んでいた。
何度も、何度も
叫んでいた
何だ、いよいよ俺も選ばれし勇者様ってか。
物語の始めに女神様とか精霊様とかの声がまるで幻聴みたいに聞こえたりするのはB級のRPGなどでよくあった。
と、いうことは俺はB級主人公か。
などと真面目に考えてしまうシオンだった。

