「・・・1年ってお前、1年って」
「あ、大丈夫。時間の流れがゆるーいから戻ったときはこの空間に入ったのと殆ど同じ時間になってるよ。シオンが来るまでもう1日くらいは経ってるし」

「おいおい」

たった一人で1年間も広い図書館の中、たった1冊の本をひたすら探すなんてこいつ、意外と・・・


「まあ面白い本があったからつい読んじゃってさ、しかもそれがシリーズ物でさ」

・・・はい?

「読み終わったら今度は同じ作者の別の本が読みたくなって・・・どんどん輪が広がっていってさ、本当なら2ヶ月くらいで終わってただろうに・・・いやー、参った」
「それで1年て・・・お前、暇だな」
さっきほんの少しでもリクに同情した自分が馬鹿らしくなった。



「それでシオン君、ちゃんと探してるのかね?」
「ん」



探すっていってもどこから探せばいいのか・・・
適当に本棚を眺めていたら、ふと1冊の本が目に留まった
「ん・・・これかな?」

タイトルは“破壊による平和”だった。
・・・思想書か何かか?
何だか宗教入ってるなあ・・・

そう思ってシオンは本を開いた。するとそこには、


「なあ、リク・・・歪みって見た目はどんな感じなんだ?」
真っ黒に渦巻く“何か”があった

「んーとね、ちっさなブラックホールみたいなのが多いよ。渦潮とか流砂みたいなのもたまにあるけど」
「ふーん」


少しの間が空いた、そして
「じゃあ、これの事か」
シオンがぼそっと言った。

また数秒の間が空く。


「え」
と、リクが一文字で喋った。

「ええええええええええええええ」
と、リクが一文字の羅列で驚嘆を表した。
ものすごい速さとものすごい形相でシオンの方に向かってくる。
そしてシオンの持っていた“破壊による平和”を見た。

「うわっ本当だ、すごい、すごすぎるってシオン」
何だか良く分からないがそう褒められるとどうにも弱い。

「そ、そうか?」
まあ確かに何千何万とある本の中から1冊目で見つけてしまうというのは結構すごい事かもしれないな、うん