沈黙が続くのが何とも気まずかったので、本を探しながらシオンはリクに色々と質問をした。
「歪みってのは本からも生まれるものなのか?」
「まあ、無くはないよ。本だって人間の想像力の結晶みたいなもんだもん。でもやっぱり数は少ないと思うな・・・ん、これも違うか」
「じゃあどういうケースが多いんだよ、やっぱり芸術家か?」
リクは首を左右に振った
「いんや、これがまた意外と少ないんだよそれも。芸術的センスが高くても、精神力がある程度あれば・・・分かりやすく言うと理性が強ければ本能を抑えられる、みたいな感じかな。一番多いのは大事な大事な頭のネジを電車の中とかに置き忘れた連中かな」
リクは「ああ、図書室って何でこんなに本ばっかりなんだろ、馬鹿みたい」と図書委員にあるまじき発言をしたのち、“スライムが勇者を倒す”というタイトルの本を本棚に戻した。
流石にその本は無いだろ、色々と。
「ってことは・・・危ない常備薬を服用している方々とか、か」
「そ」
リクは一文字で返事をした。
「最近は自然発生が多いんだよねぇ、まあそういった連中の大半は精神力が弱ってても、想像力も無いのが多いから勝手にしぼんで消えちゃったりするのが殆どなんだけどねぇ・・・」
「お前ってもしかして今までもこうして歪みを直してきたのか?」
「ん」
リクはまた一文字で返事をした。
こんな天然濃度の高いやつが世界を救ってたんだと思うと、今この世界があるのはきっと天文学的な数値、分の1くらいの確率なのだろう。
シオンはそう思った。
「ところでさ、質問するのもいいけどちゃんと探してる?」
「ん」
シオンも一文字で答えた。
だが、リクとは違い否定的な意味を持った一文字だった。
「いや・・・歪みが広がるのはそんなに早くないし、この空間のなかでは年を取ったりとかはしないようになってるからどんなに時間がかかってもいいんだけどさ・・・・。あんまり時間がかかりすぎると・・・発狂するよ、たぶん」
「そ、そんなにかかるもんなのか?」
「前に1度だけ図書館に歪みが出来たときは酷かったよ、一年以上は絶対かかってた」
急にリクがものすごく思えてきた。

