「ちょっと、あのっ」

あまりにもの急展開に、頭がついていかない。
私はまるで金魚のように口をぱくぱくさせるほかない。

「はい?」

一方。
最初から予定していたのか、大雅は。
凪いだ海のような穏やかな色をその瞳に浮かべ、甘やかな微笑を携えて私を見つめていた。

「大雅、本当にそれでいいの?」

「変なことを聞くんですね。
本当も何も、私が都さんを手に入れるたった一つの方法なんですから。
他にどうしようもないでしょう?
愛人は嫌だと言うし、妹のままではいたくないと言うし。
このうえ、極道の妻は嫌だと仰るおつもりですか?」

ず、ズルイ。
そんなに切なさを溜め込んだ瞳で私を覗き込むのは反則です!!

「分かりました。
いいですよ、都さん。
一度だけ選択権を差し上げます。
私の妻になるのなら、キスを。
嫌ならその指輪を外してください。
アナタがどちらを選ぶにせよ、今後も今までと代わりなく優しく接して差し上げます。でも、そうですね。嫌と仰るならやはり、私は他の誰かを妻に迎えるほかないのですが。もちろん、その女には指一本触れないと約束できます。だけど、都さんは嫌なんですよね、愛人になるのは」

ななななな、なんですか、それ?

動揺している私に比べ、大雅は本当に真剣な眼差しで私を見つめているから余計に困る。