Melty Kiss 恋に溺れて

「じゃあ、いい子になんてなってあげない」

私は、困った顔をする大雅を、真っ直ぐ見つめてそう言った。

結婚なんてしないでよ。


だけど。
私の感情だけでそんなこと言えない現実も分かっていた。

彼の妻になるために、育てられてきた妙齢の娘たちが何人いることだろう。

それぞれの組の下の有力者たちは皆、自分の娘を彼の妻にしたいのだ。

それだけで、ぐぐっと組の中での地位があがる。

自分と、そして部下たちがこの世界でのし上がって行くための大切な手段の一つ。

そう。
大雅の妻になることイコール大雅の愛を勝ち取ることなんかでは決して無い。

妻なんて、紙切れ一つの問題で。

……でも。
大雅のこと、大好きだけど。
愛人になりたいかと問われると、それは少しまた別問題なわけで。


複雑な乙女心。

分かってもらえると、ありがたいのだけれど。