随分長い事歩いたような気がするが、実質は10分程度の距離だろう。

青々とした緑の茂る、広大な森が見えてきた。

エルフの森だ。

俺とナハトは命からがらその森に辿り着く。

「女はそこの木陰に寝かせてやれ。涼しい風が通り抜ける場所だ…じきに回復するだろう…無論お前も座って休んでいろ。砂漠の気候を嘗めると痛い目に遭う」

そう言ってエルフの女は歩き始めた。

「少し待っていろ。冷たい水と、何か食事を持ってきてやる」

…俺はエルフと交流するのは初めてだ。

人間からしてみれば魔物と同じであり、亜人種も竜種も同一の存在。

だが。

「ありがとう…助かった…」

俺は心から礼を言っていた。

「俺はアキラ…そっちはナハトっていうんだ…名を聞いて構わないか?」

俺の問いかけに。

「…フィルナだ」

尖った耳に金髪、切れ長の瞳のエルフの女は、ぶっきらぼうに答えた。