「無理だな」

俺はタンブラーを頑丈な造りの木のテーブルに置いた。

「そう言うなよ『火の玉』!美少女のお願い事だぜ?可愛い可愛い土の民のお嬢ちゃんのよ!」

酒場の誰かがそんな言葉を口にして、店内は嘲笑の渦に包まれた。

…ここはファイアル地域にある街、そのとある大衆酒場。

俺は賑やかな店内で、一人の女とテーブルを挟んで睨み合っていた。

…目の前に座っているのは、小奇麗な身なりの女だ。

年の頃十八くらい。

黒のベレー帽、かっちりとした黒いスーツ、下は同じく黒のタイトミニ。

いいとこのお嬢さんなのは一目瞭然だった。

ショートの灰色の髪、そして端正な顔立ち。

その表情は、さっきから1ミリも動きやしなかった。

東の地、ドーラの土の民は無口で無愛想とは聞いていたけど、ここまで人形めいているとは思いもしなかった。