東の地、ドーラ。

そこに向かう前にはまずライストを通らなければならない。

ライスト。

光と闇の民が住む土地。

『ライスト王国』を中心として約6つの国家が存在する。

全ての地域の中心に位置するため商業国家として発展しており、また長きに渡る千年戦争の中で縮小と拡大を繰り返した地域。

商業国家であるがゆえに五つの地域の中では最も財産に溢れる地域であり、その大半が軍備に使われている。

過去何度も侵略行為を受けているこの国ならではの話だ。

同時に全ての地域の中心となるこの国は、人種の坩堝でもある。

大通りで歌い踊るフーガ人。

狩猟で手に入れた魔物の素材を売りさばくファイアルの剣士。

簡易の診療所を設けて病人の診察をするアイスラの医者。

違法に露店を出して商売をする他国の人間を取り締まるライストの騎士。

様々な人間が溢れ返り、この世界は多国籍の人間でひしめいているのだと改めて思い知らされる。

「人混みは…苦手…」

ナハトが少し眉を潜めて呟く。

そもそもドーラの民は、外界に出る事を好まない。

ナハトだって汚竜なんて現れなければ、一生ドーラの中で人生を送っていた可能性だってあるのだ。

そんな彼女には、この人混みは少し騒々しすぎるかもしれない。

そもそもライストは俺達にとっては通過点に過ぎない。

さっさと通り抜けてしまうに限る。

そんな事を考え、足早に通り過ぎようとしていた時だった。