討竜の剣

俺はゆっくりと立ち上がる。

「…再生竜…どうして俺を…?」

「なに…少し昔を思い出しただけだ」

遠い目で彼は言う。

「小難しい事は考えず、ただ皆を守りたいから魔王と戦った…私の同胞だった火の英雄も、そんな単純明快な奴だったとな…」

長く生きるとは、知らなくていい事を知りすぎてしまう事なのかもしれない。

再生竜の目は、そう語っていた。

…彼は無言のまま、己の二本の頭角…その一本を岩場に叩きつけてへし折る。

俺の剣よりも長い、大きな角だった。

「くれてやる…持っていけ」

「え…」

ようやく立ち上がり始めたナハトに手を貸していた俺は、驚いた顔をしていたに違いない。

その顔を見て再生竜は笑う。

「貴様のお陰で懐かしい思い出に浸る事が出来た…その礼だと思ってくれ」

それっきり。

彼は何も語らず、静かに目を閉じる。

…己の頭角の片方をくれてやるに値する。

再生竜はそう判断してくれたのだろう。

ただただ、感謝するしかない。

…再生竜。

かつてこの世界を救った、土の英雄の変わり果てた姿。

その偉大な英雄に一礼をして、俺とナハトは休火山を後にした。