ある日社長が言った。
「優花、お前、撮影会行ってこい。ミスコンが代々参加するおっきなやつだから、名前売ってこいよ。」


「は～い。」
優花は携帯ゲームをいじりながら、だるそうに答えた。

撮影会は好きじゃない。

何百人のカメコに囲まれて写真を撮られるのだ。
しかし、人気はあるといっても、まだ売り出し中で安月給の優花には 重要な収入源である。
それに ファンも増える。
どんな有名タレントも皆 通る道である。
「頑張ってくるか！。」

気を入れるように優花は呟いた。


撮影会当日。数百人のカメコがうん十万するであろう、カメラを手に持ち、優花を囲んでいた。

「優花ちゃーん、可愛いよ～！。」

「そうそう！！。良い表情だ！！。目線こっちね～。」

にっこり！！。
「は～い☆。」
満面の笑顔で微笑みながら、優花はポーズや表情をくるくる変える。

相手が誰だろうとちやほやされるのは楽しいものなのだ。

同じような出で立ちのカメコの中に、ふっと優花は視線を止めた。

（・・やせに若いカメコだな。）

二十代後半くらいだろうか？？。身なりも いわゆる秋葉系ではなく、ごく普通の青年風の人がいたのだ。

（へ～、珍しいな。あんな普通っぽい人が撮影会くるなんて。）