体育館を出て、1人保健室へ向かう。
ひねった右足をかばいながら、ヒョコヒョコと歩く。
「都筑!」
と、背後から誰かに呼び止められる。
いや、誰かなんて嘘だよ。
この声は…
「都筑、大丈夫か」
間違うはずがないよ。
春先輩だもん。
でもあたしは、立ち止まるだけで振り返らなかった。
いや、振り返れなかった。
「………」
「お前、最近どうした…」
「健ちゃんっ!…と、ハルちゃん?」
先輩の言葉を遮るように、早音さんが走ってきた。
「あたし、保健室行きます…」
少しだけ顔を後ろに向けてそう言うと、あたしは逃げるようにその場を離れた。
もちろんヒョコヒョコ歩きだから、格好なんてつかないんだけど。
2人っきりにしてあげなくちゃ!
これがあたしの…精一杯です。

