こんな満員じゃ、なかなか身動きが取れないよ。



………!



「先輩、ちょっとココア持ってて下さい!」

「は?なに?!おいっ、どこいくんだよ?!」



これはあたしの勝手なお節介だから、先輩に迷惑かけらんないよ。



先輩の声を背中で聞きながら、あたしの目には1人のオジサンしか映っていなかった。



見つけてしまったからには、どうも放ってはおけない。



人が多すぎて上手く前に進めない。



背の低さを利用して、人と人の間をすり抜けて行く。



そして……、



「オジイさんっ!そう言うことは、許可をもらってからじゃないとやっちゃダメなんだよ?」



破廉恥なその手を、ギュッと掴んだ。



「お、オジイさんだと?!なんなんだ君は!」

「あ、駅着いた!オジイさん、一緒におりよう」



掴んだオジサンの腕を引っ張って降ろそうとすると、



「お、俺は何もしてないんだよ!離せ、このガキっ!」



“べチっ”



「……あ」