「ねぇ、華姫さん。 華姫さんは、誰を思ってあの歌を歌ったの その人の事、聞いていい」
あぁ、言うつもりのなかった言葉が、無意識に出てしまった。
だって、あの歌は…「レクイエムだよね」
「えっ」
華姫さんが、驚いた様に僕を見る。
「さっき、華姫さんが歌ってたの、レクイエムだよね」
そう、あれは鎮魂歌(レクイエム)亡き人を想い歌う歌だった。
「ごめんなさい。本当は、聞いてはいけない事なんだろうけど、僕はどうしても知りたいんだ。」
あの歌を聞いた瞬間、僕は涙を流してた。
もう、とっくの昔に枯れてたと思っていたのに、泣いてたんだ。
それは、きっと多分僕が予感しているからだろう。
「…長くなるかも知れないから、彼処の東屋に座ろうか。
そして、紫苑君は、これを着ること。
そのままじゃ風邪ひくよ」
華姫さんは、苦笑すると、僕に着ていたコートを差しだした。
僕の格好は、パジャマにカーディガンを着ていただけだったから僕は、素直にコートを羽織らせてもらった。