「……敵襲、だと?」 ティグは小頚を傾げて、呟く。 物音一つさせず、百人隊に気付かれず接触出来る部隊など、今までの鬼鴉には存在しない。 そう自負していただけ、ティグは混乱するのだった。 不気味なほど、戦場とは思えない場違いな空気が漂う。 血の臭い― 戦いによってではなく、疫病のよる、死の臭いを思わせる。 理不尽な死臭は徐々に、確実に、密林を支配していく。 仲間の姿が、見えない。 密林を抜け、少し広がった草地に出たティグの眼前に、信じられない悍ましい光景が映った。