床に転がる紅拳とは対称的に、闘兵衛は天を仰ぎ呼吸を乱す。 糸の切れた人形のようにその場に倒れそうになるが、片膝をつき耐え凌いだ。 「ゼェ……」 口元から血を垂らしながらも、脱臼した左腕を抑え、闘兵衛は粗く息を吐く。 よたつくように足を踏み出すと、先程、銃佐ェ門が出て行った扉に向かった。 沈黙が支配する大広間を後にするように、闘兵衛は壁に寄り掛かり歩く。 獣の戯れは、幕を閉じ、空虚しか残らない。 扉の閉まる音だけが、全てを物語っていた。