夜、とある屋敷の前に、闘兵衛の姿があった。



闘兵衛は、門を見上げながら立ち尽くしている。


屋敷の表札には、犬飼と書かれていた。



桃太郎の、屋敷である。



剣山との闘いから、三日ばかり過ぎただろうか、あの日以来、桃太郎は姿を見せなくなっていた。


桃太郎の様子が気掛かりであった闘兵衛は、紙洲に以前聞いていたこの屋敷を、訪ねる事にしたのである。



「……本当に、人が住んでんのか?」


闘兵衛は、門扉の前で呟いた。

人の気配はするのだが、門を押そうが引こうがびくともしない。



「仕方なし、か……」


闘兵衛は塀に手を架け、跳び上がった。


不法侵入、である。


『フワッ』


まるで重力を無視するかのような跳躍で、闘兵衛は屋敷内の庭に静かに、着地した。