――半刻後――



闘兵衛は、外観が質素なあばら家の並んだ道を、真っ直ぐに歩いている。




――貧乏長屋――


桃太郎に教えられた場所を人づてに尋ね、やっとの事でその長屋に到着したのであった。



「此処、か……」


闘兵衛は、一軒のボロ家を見上げて呟く。



「なんかようかい?」



そのボロ家の奥から、声が掛かった。

一人の男が土間に腰を下ろし、闘兵衛を見詰めている。

否、おそらく見詰めているのだろう。


何故かというと、眼が細い。


のっぺら坊、一見そう感じるほど目と口の造形がないのだが、顔の中心には立派な鷲っ鼻が付いている。

よく見ると、まるで切れ線のような目と口が、筋のように走っていた。