紙洲の情報では、闘兵衛と剣山は顔見知りという事になっている。
多少は狼狽すると紙洲は思っていたのだが、冷静過ぎるほどに、闘兵衛は無表情であった。
「……わかった」
闘兵衛は外套をひるがえして、長屋を出ようと歩を進める。
「闘兵衛っ!!どうするつもりだっ!?」
桃太郎は慌てふためき、終始冷静な、否、冷酷な表情を浮かべる闘兵衛を引き止めた。
「……鬼鴉なら、話しを聞くダケだ」
「殺るつもりじゃあ、ないだろうなっ!?」
闘兵衛の抑揚のない言葉に被せるように、桃太郎は叫ぶ。
「殺る……、しかねぇ、かもな?」
無表情で答える闘兵衛に対し、桃太郎は目の前に駆け寄ると両肩を掴み、問い掛ける。
「先刻まで……、あれほど嬉しそうに話していたのは、嘘なのかっ!?」
肩を揺さ振られながら、闘兵衛は答えた。
「……お前が、俺に教えてくれたハズだ。覚悟と責任を持てとナ?だから行くんだ……、俺は」
桃太郎は無言で諦めたかのように、闘兵衛の両肩から腕を下ろす。
そして立ち去る闘兵衛の後ろ姿を見送る事しか、出来ないのであった。
