――貧乏長屋――
長屋の主である紙洲の姿は、ない。
だが、そこには闘兵衛と美形の剣士、桃太郎の姿があった。
「初めてだな……、お前が侍の事を褒めるなんてな?」
桃太郎は、珍しく機嫌の良い闘兵衛に理由を聞いている。
普段は、ほとんど口数の少ない闘兵衛も、剣山との出会いにいたく感銘を受けたらしく、よく話していた。
「別に侍を褒めた訳じゃあ、ねぇよ?俺は緒方って人を褒めたんだ……」
闘兵衛は少しだけ不機嫌な表情を作りながらも、さらに続ける。
「緒方さんが、言ってたゼ。……侍は、肩書でも家督でもない、生き様だってな?俺が見てきた侍とは、全然違うね」
いつもに比べて、多弁な闘兵衛に対し、桃太郎は驚く。
おそらくコレが、この青年の、闘兵衛の本当の姿なのだろう。
桃太郎は微笑みを浮かべて、闘兵衛の話しに耳を傾け、真っ直ぐに見詰めていた。
