「無礼討ちじゃっ!!」



夕暮れの路上で、一人の侍が大声を上げる。


「お許しくだされ……、お侍様ぁ」


老人は一人の幼子を庇うようにして、平伏し、謝り続けていた。



この時代、よくある風景である。

理由はぶつかっただの、鞘に触れただの、しょうもない事であった。

武士にはソレだけで、人を斬る理由がある。

意地か自尊心か、平民に対し、ある種の差別的な要素が蔓延していた。



太刀の柄に手をかけ、今にも抜刀しようとする侍の眼前に、一人の人物が老人と幼子の中間に立ち塞がる。


「なんだぁ、貴様ぁ!?邪魔だてするなっ!!」


侍は突如現れたその人物に、大声で怒鳴り、威嚇した。