港から離れた街角に、薄汚れた二階建ての宿屋があった。
その宿の一室の寝具に、1人の男が静かに腰掛けている。
胴着のようなモノと黒い袴、両腕には手甲を巻いており、黒い長髪を無造作に後ろで結っていた。
「……やれやれ」
めんどくさげに声を漏らすその男は、気を抜くように姿勢を崩す。
中肉中背、顔の造形もいたって普通なのだが、目付きが非常に悪い。
まるで獣、狼のようであった。
名を、闘兵衛という。
この闘兵衛という男も、禁らの仲間である。
しかし、彼の目的は海賊になる事ではなく、一つだけ交わした約束を果たす為だけに、共に旅に出たのだった。
