闘兵衛は、暗闇の中に立っていた。



全てが闇で染まり、足元もおぼつかない。


どちらを向いているかもわからない闘兵衛は、後方に気配を感じた。



女性。



一人の女性が、静かに立たずんでいる。


その女性を、闘兵衛は見知っていた。


闘兵衛の姉である。


姉は、胸元にナニかを抱いており、沈黙を守っていた。


暗闇の中、闘兵衛は目を凝らすとぼんやりと、その詳細が見えてくる。



そのナニかとは、父親の頭部。


姉の喉元も寸前まで切り裂かれ、モノ言わぬ骸となっていたのだった。