「仇は、とれたのか?」
紙洲はその登場の仕方に特に驚く事も無く、平然としたまま闘兵衛に問い質す。
「まだ、山には帰れそうもない……」
闘兵衛は空を見上げ、遠い目をしながら、ボソリと答えた。
「物騒な、こった……」
紙洲は細い目を見開き、心底不愉快に、嫌そうな表情を浮かべて悪態をつくように呟く。
「……約束?」
桃太郎は先程闘兵衛から発っせられた言葉の意味が解らずに、聞き返していた。
「飯を奢る……、と言ったろう?」
闘兵衛は無表情ながら、少し困った口調で、返答する。
「……忘れていたよ」
思い出すように桃太郎は顎先に指をあて、歩を進めながら玄関を潜りぬけると、闘兵衛と顔を見合わせ呟いていた。
