「緒方……、という最後の武士だ」 鬼人が発っした人名を、桃華は知っている。 「……緒方 剣山……」 「っ!?……知っているのか、桃華よ?」 意外な申告に鬼人は驚愕するのだが、桃華がその人名をゆっくりと声にしたのは、ワケがあった。 そうしなければ、自分の精神が錯乱するかもしれない。 闘兵衛と、剣山。 家族を殺された闘兵衛が復讐の為に下山し、出会った男。 闘兵衛が唯一尊敬した侍であり、その手で殺した人物。 鬼鴉の、緒方 剣山。 絡み合う疑念は、一つの呪われた名称を思い出させていた。