「……この耳は、必要がないな」
闘兵衛は返り血にまみれた右手で、男の右耳を弾きながら問い質す。
男は右耳があった場所を押さえ、激痛にもがいていた。
「……ッ答えろっ!!」
闘兵衛はその右耳を握り潰すと、憤怒の感情を剥き出しにして、男に咆哮する。
「……俺らじゃネェ!!別の、奴らだっ!!」
「!?」
男の吐き出した答えに、闘兵衛は顔を歪めた。
「知らねぇ、知らねぇ、俺じゃねぇ……」
男は恐怖に怯え、自分の無実を訴えるように独り言を、繰り返す。
「別の……、鬼鴉に聞くまでだ」
闘兵衛は踵を返し、男をそのままにし、草原を去ろうとする。
「……へ、へへぇっ!?ハッハッハッ!!」
男は突然狂ったように笑いだすと、闘兵衛の背中に向かって叫び掛けた。
「家族もろ共、殺されてしまえっ!!」
男の捨て台詞に対して、闘兵衛は無表情で向きを元に戻した。
「……テメェは、いま、死ね」
闘兵衛は感情を込めず呟くと、男の頚椎を狙って右脚の踵を振り上げ、そのまま踏み抜く。
