「!!?」
男はその異常な事態に、慌てて太刀の柄を握り直し、対応しようとする。
右後方より、尋常では無い殺気が迫って来た。
(は……、速ェッ!?)
男は闘兵衛の速度に舌を巻きつつも、差し迫って来る殺意に合わせるように、振り向くより速く、太刀を抜き放つ。
『チィィンッ』
最速の抜刀術。
鞘内にある刃を走らせ、薙ぎ払うように、右後方から確実に迫って来るであろう闘兵衛を捉える。
『ギャインッ』
激しく鈍い金属音が響き渡り、男の太刀は闘兵衛の手甲で抑えられていたのだった。
(て、鉄甲っ!!?)
男は、渾身の太刀を絶妙な間で鉄甲によって防がれた事と、闘兵衛に一瞬で間合いを詰められた事に驚愕する。
闘兵衛が腕に巻いている手甲は、鉄板を仕込んだ鉄甲であった。
その瞬間、侍の動きが止まってしまう。
