「……野郎っ!?逃がすかよっ!!」
紙洲は、逃げ出す男の姿を目で確認し、慌てて叫び止めようとする。
「待ったァ!!」
声を荒げ、桃太郎は紙洲の行動を阻止していた。
「……桃さんっ?」
紙洲は、一喝だけで動きを妨害した桃太郎に、尋ねるように声を掛ける。
桃太郎は太刀を抜き放つと、右八相の構えをとりつつ、落ち着いて、口を開いた。
「まずは……、雑魚共からだ……」
「……心得た」
柄を握り直し太刀を鳴らした桃太郎に、紙洲は、不承不承ながら短く返事をする。
残った二人組を取り囲むように動きだす桃太郎達と、逃げ腰の木林。
だが、その火中に闘兵衛の姿は無かったのであった。
