『キィィィィンッ』
甲高い金属音が、山の中に響き渡る。
「……ヌゥッ!!?」
男は驚愕の声を上げ、己の抜いた太刀を鞘に納めていた。
居合術。
男の習得している技術、鞘内から力を篭めて引き抜く事により、滑らせて加速させる抜刀術。
高速で抜き放たれた太刀は、目の前の侍の胴を薙ぎ払うハズであった。
しかし、目の前の侍は、鞘から半分程出した太刀だけで、必殺の一撃を受け止める。
「手練れ、か……」
男は、太刀を半身だけ抜いた状態で身構える侍、桃太郎に向かって呟いていた。
その攻防だけで、桃太郎の腕前が並々ならぬモノである事は、手に取るようにわかる。
手強い。
男は、咄嗟にそう判断すると踵を返して林の中に駆けこんでいった。
