――山中――
青々とした樹木が匂い立つ獣道を、紙洲を始め、桃太郎、闘兵衛の三人が歩いていた。
街から離れ、かなりの刻がたつ。
沈黙が続く道中、桃太郎はソレに耐えきれずに、闘兵衛に声を掛ける。
「なぜ、鬼鴉を探す?」
興味本位からの質問であろう、答えを期待していなかったのだが、闘兵衛は口を開く。
「先程の商屋と一緒だ、……家族を、殺られた」
飄々と、無表情で語った闘兵衛に対して、紙洲も問い掛ける。
「それで刀も持たずに、復讐か?」
闘兵衛の肩が一瞬だけ震えたのを、桃太郎は見逃さなかった。
「俺は侍じゃネェんだ。……これは喧嘩、売られた喧嘩を買うだけ……」
「「……」」
闘兵衛は猛獣のように牙を剥いた表情を浮かべ、その言葉を吐き棄てる。
あまりの狂暴性、自虐性に、嫌悪感と憐憫の情を持って、紙洲と桃太郎は沈黙していた。
