「……長崎、だ」 「長崎っ!?」 九州西の位置にある地名が、紙洲の口からもたらされる。 闘兵衛は立ち上がり外套を羽織ると、取り急ぎ、旅立ちの準備を始めた。 「犯人は書き置きを残していたのだが……、この事件は、俺の範疇を越えているような気がする」 紙洲は腕を組みながら、独り言のように呟く。 その言葉を背中で聞きつつ、闘兵衛は拳を強く握り締めていた。