室内には無数の本が転がっており、その蔵書の数に紙洲は驚いている。
この時代、本は貴重な物であり一般人においそれと、手に入る物ではなかったからだ。
「……すごい数の本だねぇ?おっ!?……すまねぇナ」
本の数に見とれる紙洲に対し、闘兵衛は水の入った杓を渡しながら口を開く。
「親父が、本好きでな。……よく学者先生ん所に行っては、写本して持ち帰ってよ?……気付けばこの数だ」
闘兵衛は寂しげに呟きながら、土間に腰掛ける。
「読めるのか?」
紙洲はすぐに浮かんだ、率直な質問を闘兵衛にぶつけていた。
字を読めるというのは、ソレだけで特異な存在といえる。
この時代、学問を受けられるのは武士のみといえたからだ。
