「……っグガァッ!!」 顔面を血まみれにし、獣じみた咆哮を黒鬼は上げていた。 砕け、ひしゃげた鼻骨と折れた前歯からは流血が止まらず、その煩わしさが、さらに狂気を焚きつける。 斬られた左脚は動きを封じる原因となり、そのもどかしさは怒りと狂気を倍増させていた。 だが、黒鬼の後方より、火繩銃を構えた銃佐ェ門が、忍び寄って行く。 怒りに猛る狂獣にはソレに気付く術は、なかったのであった。