紙洲が山を登り始めてから数刻が過ぎ、山の中腹程に辿り着くと、少し広がった雑木林に出る。 その中央部は綺麗に整地されており、少し大きめな石が二つ並んで置かれていた。 その石の近くの大樹に、人影が見える。 その人影は胴着のような上着に袴を履き、長髪を無造作に垂らし結んでいた。 両腕に手甲を巻いている以外は普通の青年にしか見えないのだが、目付きが非常に悪い。 一匹の獣、狼のような目をしていた。